税理士 渋谷の技術の身につけ方
改革と呼応し、大蔵省改革の第一歩としての金融監督庁設置法が97年6月に成立し、大蔵省から金融機関の検査・監督機能が分離・独立することになった。
以上のような日本版ビッグパンは、(保険については改革のスピードが鈍いとの批判もあるものの)2001年までに実現されるスケジュールの生損保の完全相互参入と合わせ考えると、保険制度改革のスタートを切ったばかりの生命保険業界を早くも大きな変革のうねりに巻き込んでいるといえるのである。
情報通信のイノベーション、金融市場のグローバル化ならびに多様な金融派生商品の発展は、21世紀において、決済、情報生産、資産管理、保険リスクの引受けといった保険を含む金融業務の構成要素の分解(アンバンドリング)をもたらし、銀行、証券、信託、保険などの伝統的な業務区分を暖昧にする可能性が強い(生命保険会社の資産管理の一環としての貸付の機能分解について。
アメリカでは、決済機能型投信MMF、資産証券化およびデリパティブ市場の急成長がその現れと見られているが、保険の分野においても、伝統的な利率保証契約(GIC)から合成GIC(年金基金の資産を生命保険会社には移転せずに、運用能力のある銀行や別の生命保険会社などに委託し、当該生命保険会社は単に解約時に約定価格で資産を買い取ることを約したGICであり、一種の金融保証あるいはプット・オプションの発行と見ることができる)への流れ、シカゴのCBOTにおける地震保険の再保険を引き受けるオプション・ライターの出現はその萌芽ということができよう(保険とオプションおよびCBOTのオプション・ライターに関して、T教授の『保険構造論(1991年)』(千倉書房)および「CATの構造について-集積リスク対応の新機軸」『保険学雑誌第555号』3頁参照)。
生命保険会社が保険リスクの引受けと資産管理を自己完結的な形で提供することに何の疑いも持たないわが国では信じがたいことかも知れないが、情報通信技術の発達と巨額な金融資産の蓄積は、金融業務の高度化・分業化を促進し、個々の金融サービスの構成要素ごとに比較優位を持つ者が提供する形で、全体として金融システムの効率性をもたらす可能性が強いのである。
以上述べたように、21世紀に入ると、保険を含む金融システムは大きくその姿を変える可能性が高く、金融のアンバンドリングをにらんだ対応が求められる。
生命保険業に大きな影響を及ぼすと思われる要因の1つに情報通信革新がある。
情報通信革新は、これまで述べた金融制度改革や金融業務の高度化・分業化を通じて生命保険業に影響を与えるが、オープン・ネットワーク社会の消費者や企業の意識・行動を変え、電子商取引(EC)や電子マネーなどを可能にすることで生命保険商品の開発、販売スタイル、契約の維持管理などにも直接的な変革を求めることになる。
販売面での革新としては、たとえば、これまで営業職員チャネルに導入されてきた営業支援システムがモバイル・コンピューティングによって一層効率化され、グループウェアのデータベースへのリモートアクセスが可能になる。
また、主体的な意思で都合のいい時に自ら商品・サービスの選択を行うようになった消費者は、インターネットのバーチャル・モールで金融・保険商品をショッピングする(生命保険のEC) ことができるようになる。
生命保険の電子商取引に関する契約法や保険監督法上の(契約者保護の)問題さらにはネットワークのセキュリティやプライバシー問題など解決すべき課題も残されてはいるが、インターネットを中心とするネットワークや電子マネーによる、商品・サービスの利用が行われるようになると、従来の支社、営業所や営業職員チャネルとは相互補完的な新たなチャネルが登場する。
当初は、生命保険の加入や維持管理事務をすべて電子データで行うことは困難であろうが、営業職員を介在させるなどの方法でモラルリスクの少ない年金保険などを中心に販売することはすでに始まっている。
また、事務管理面でも、ここ数年の情報化の流れの一つは、メインフレーム(大型汎用機)中心のシステム構成からクライアント・サーバー方式へのシフトであるが、最近はインターネットが急速に普及したのに伴い、イントラネットとの連携がすすんでいる。
インターネットは生命保険会社の情報システムも大きく変えつつある。
インターネット関連技術を使って社内情報システムを構築するイントラネットが生命保険会社にも導入され、情報の共有化や意思決定の迅速化などを通じて、非提携的な事務や商品開発、営業企画、運用企画などの企画部門の効率化をすすめる原動力になっている例も見られる。
情報通信革新時代を迎えて、生命保険業界が抱える具体的な課題と対応の方向については後述するが、これからの生命保険会社は、多様化する顧客のニーズに応えて伝統的な業務の範囲を越えた企業活動を展開するためにも、最新の情報通信技術を適切に導入していくことが求められている。
先に述べたような生命保険業を取り巻く生活保障システムの変化と金融制度改革に加えて、生命保険市場にも大きな構造変化の波が押し寄せている。
先ず、急速な少子・高齢化を反映して、保険種類の個人生命保険(以下「個人保険」という)から個人年金保険、団体年金保険へのシフトが加速度的に進んでいる。
保険料積立金でみて、1975年にはそれぞれ僅か10%と1%にすぎなかった団体・個人両年金保険の比率は、86年には21%と3%に上昇した。
その後も年金保険は、バブル期を通じて大きくその占率を伸ばし、バブル崩壊後も個人保険の伸び悩みもあって着実にその占率を上昇させ、95年度にはそれぞれ35%と8%に達している。
ただ、団体年金は1994年4月の予定利率の引き下げ(5.5%←4.5%)の影響もあって、95年からは頭打ちの傾向が生じ、96年4月の再度の予定利率引き下げ(4.5%←2.5%)と規制緩和による投資顧問への資金シフトによって96年度は大幅な落ち込みが見込まれている。
それでも、伝統的な個人保険分野の死亡保障商品が成熟化するなかで、高齢化対応としての年金保険が趨勢的にはウェイトを増していくと見られている。
もっとも、この分野は金融他業態との織烈な競争にさらされつつある分野であることも事実である。
個人保険は、戦後わが国経済の高度成長とともに大きく伸びてきた。
しかし、1974年の第一次オイルショック後、経済が安定成長に移行するとともに個人保険の死亡保障市場は成熟化の傾向を示すようになった。
そのため、生命保険業界はマーケット の創造戦略として低料化(保険料率の引き下げ)と定期化(特約としての掛け捨て型の定期保険の主契約の養老保険ないし終身保険に対する倍率アップ)による数量拡大戦略を押し進めてきた。
80年以降でみても、個人保険新契約高の対前年増加率は、低料を実施した年(81年度、85年度、なお90年度は主力保険の低料)には伸びるもののその後伸び悩み、その回復策としての次の低料によって引き上げが図られるという構図でもたらされてきた。
しかも、低料時に、それまでの保険を下取りする契約転換が強力に進められた。
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